「両面表示型LCD(Double Faced TFT-LCD)」
シャープ ディスプレイ材料研究所 主任研究員 津田 和彦
1.まえがき
近年、折りたたみ式携帯電話機では、簡単な情報を確認するための小型のサブディスプレイを背面に持つものが主流となりつつあります。しかし、このような携帯電話機にはメインディスプレイとサブディスプレイの2つのLCDが搭載されているため、本体が厚く、重量も大きくなるという問題があります。
このような問題を解決するため、我々は一枚のディスプレイで表裏の両面で表示が可能なLCD*1(以下、両面表示型LCD)を開発しましたので、そのコンセプト・パネル構成・特長について解説します。
2.両面表示型LCDの基本コンセプト
薄型化/軽量化を達成するため、両面表示型LCDは、一つのライティングシステムと一枚の液晶パネルだけで実現することを目指しました。また、サブディスプレイには待ち受け時の消費電力を抑えるため反射型が好ましく、画像を取り扱うメインディスプレイには、画質を優先するため透過型が好ましいと考えました。従って、液晶パネルには、一方からは反射型LCDとして、他方からは透過型LCDとしての動作する様に設計しました。
3.パネル構成
以上のコンセプトに基づいた両面表示型LCDの基本的なパネル構成を図1に示し、以下にその特徴を説明します。
まず、第一にライティングシステムは、反射表示側からはフロントライトとして機能し、透過表示側からはバックライトとして機能させるため透明な導光板を用いています。
第二に、液晶層と偏光板2の間には偏光反射層を配置しています。ここで偏光反射層とは特定方向に振動する偏光成分を反射させ、それに直交する偏光成分を透過させるものです。ここでは、2枚の偏光板と偏光反射層の透過軸を図中に示したように設置した場合について説明します。偏光反射層を設置することにより、偏光板2側からの透過表示の暗状態において、従来のLCDでは偏光板2で吸収される偏光成分を偏光反射層により反射させ、この反射光を偏光板1側からの反射表示の明状態の光として利用することが可能となります。つまり、画素全体において透過表示側から見た暗状態は反射表示側から見た場合明状態となります。また逆に透過表示側から見た明状態は反射表示側から見ると暗状態とになります。
このように画素全体が透過表示と反射表示を同時に行うため、反射部と透過部を画素内で面積分割することによる光ロスが無くなり、原理上明るい表示が可能となります。更に、パネル内部のTFT素子、メタル配線による非透過領域上にセル内反射板を設けることにより反射表示の明るさを増大させることが可能となります。
4.特長
両面表示型LCDには次のような特長があります。
第一に、あらゆる環境で良好な視認性が得られることです。暗所ではライティングシステムを用いることで良好な透過・反射表示が得られるとともに、屋外などの明所では強い周囲光を用いた良好な反射表示が得られます。さらに屋外での透過表示はライティンシステムからの光だけでなく裏面からの周囲光を利用することで良好な表示を得ることが可能です。
第二に、モジュールの薄型化、軽量化が可能となります。従来システムでは、パネル二枚、ライティングシステム二枚の構成であったものを、パネル一枚ライティングシステム一枚の構成とすることで、厚さが約1/2に、また重さも軽減することができます。
以上のような特長を持つ両面表示型LCDは、モバイル用途に非常に適したディスプレイであると考えており、この新しいディスプレイによって新しい形態のモバイル機器が創出されることが期待されます。
*1 田口 中村 津田 :2004年日本液晶学会討論会講演予稿集 1B15