2002 年液晶学会サマースクール報告
栗原清ニ
熊本大学工学部物質生命化学科
若手および中堅の研究者・技術者や学生を対象に,液晶の科学や技術に関してその基礎から応用までを系統的に勉強する目的として行われている液晶学会サマースクールが, 2002 年度は7 月31 日(水)~8 月2 日(金)までの3 日間,九州・熊本県の阿蘇国民休暇村「南阿蘇」で,槍山為治郎実行委員長(京都大) ,野中敬正副実行委員長(熊本大)および10 名の実行委員(小川芳弘(熊本大) ,緒方智成(熊本大) ,氏家誠司(島根大) ,川月喜弘(姫路工大) ,金子達雄(鹿児島大) ,菊池裕嗣(九州大) ,清水洋(産総研) , 木村雅之(JSR) ,竹内清文(大日本インキ) ,栗原清二(熊本大)敬称略)のお世話のもとで開催されました.前日まで台風9 号, 11 号の影響が心配されていましたが,初日には天候も回復し,大学,民間企業,研究機関などから講師の先生も含めて総勢84 名の参加者があり,そのうち約1/3 が学生という大変活気あふれるスクールとなりました.
初日は,檎山先生の開校の挨拶でサマースクールが始まり,その後2 件の講義が行われました.まず,氏家誠司先生(島根大)が「液晶の基礎-液晶の種類と構造・分子構造と液晶性・同定法-j ,次いで折原宏先生(名古屋大)による「液晶の物理1 :連続体理論」というこつの講義があり,それぞれ化学・材料的側面,物理的側面からの液晶の基礎的性質や物性などについて解説していただきました.二つの講義のあとは,夕食を兼ねた懇親会が催され,各参加者が所属や研究領域を越えて親睦を深めました.また,熊本は九州のなかでも猛暑で有名で,阿蘇でも昼間はかなり気温が上がりましたが,夜になると気温も適度に下がり,大変過ごしやすい気候で,また空には満点の星が輝き, 昼の阿蘇とは違った自然の雄大さを体験することもできました.
第2 日目は6 件の講義が行われました.まず午前中は,森章先生(九州大)による「液晶の合成j ,菊池裕嗣先生(九州大)による「液晶と界面j ,そして筆者による「液晶フォトニクス」の3 件の講義が行われ,液晶材料の基本的な合成方法から七員環を有するユニークな液品分子,液晶分子を取り扱う際にきわめて重要な界面に関して,またディスプレイ以外の液晶材料の応用の一つである光機能材料としての可能性などについて解説していただきました.昼食をはさんで,午後は,杉村明彦先生(大阪産業大)による「液晶の物理2 」,小村真一先生(日立製作所)による「液品ディスプレイ1 」,吉見裕之先生(日東電工)による「光学補償フィルム」の講義があり, NMR による液晶分子の配向挙動,液晶テ、イスプレイの基礎的な構造やその動作原理,ディスプレイにとってますます重要性を増しつつある光学補償フィルムについての簡単な実験も含めた大変興味深いお話を伺うことができました.これらの講義のあと,夕食を取った後に, 8~10 時までポスターセッションが行われました.ビールなどの飲み物や2 日目で雰囲気に慣れてきたこともあってか,大変熱心な討論がなされていたようでした.
第3 日目は,鈴木成嘉先生(メルク)による「液晶ディスプレイの基礎2」 ,菊池裕嗣先生(九州大)による「電子ぺーパー」の二つの講義があり,液晶ディスプレイの製造プロセスからその評価やシミュレーションまでを網羅したお話と,液晶材料の応用として現在注目されている電子ペーパーについて解説をしていただきました.最後に閉校の挨拶と集合写真を撮影して3 日間のスクールが終了しました.
3 日間で, 10 件の講義とポスターセッションを行うというきわめて過密なスケジュールであり,ほとんど自由時聞がなく,雄大な阿蘇を参加者の皆様に十分に満喫していただくことができなかったのは残念でした.しかしながら,講師の先生方の熱心な講義と,過密なスケジュールにもかかわらず朝早くから夜遅くまで積極的にスクールに取り組んでくださった参加者の皆様のご協力のもとで,無事3 日間のスクールを終了することができました.この場をお借りして,スクールの開催,実行に際してお世話になった講師の先生方,参加者の皆様,そして実行委員の方々にお礼を申し上げたいと思います.