日本液晶学会「’98サマースクール」報告
大学の学部学生や院生および若手企業研究者などを対象とし,液晶の「基礎」から「応用」までを系統的に勉強することを目的としたサマースクールが,7月30日から8月1日までの3日間,山形県蔵王温泉のホテル蔵王にて行われました.講師の先生を含め総勢122名の参加者が標高1000m近い高原に集い,下界の暑さとは無縁の環境で,8件の講演とポスターセッションのほか,フリータイムを利用したディスカッションやエクスカーションを行いました.
参加者は,講師およびび実行委員を除いた半数以上が,液晶に携わって3年未満ということで,19名の学生を含め大変活気ある若々しいスクールとなりました.
初日は,時折雨が降る天気となり,1000km以上の道のりを車でやってきた学生や,遠くは九州から参加された方もありましたが,参加者は長旅の疲れも見せず講演会場の席に着き,実行委員長である佐藤進先生(秋田大学)の挨拶で,スクールが開講致しました.
内田龍男先生(東北大学)による「液晶の異方性と各種ディスプレイモード」と石川謙先生(東京工業大学)による「偏光顕微鏡で観察する液晶の世界」の2件の講演後,夕食を兼ねた懇親会が開かれました.18件のポスターセッションは懇親会直後から行われ,山形県産のワインが入ったほろ酔い気分ではありましたが,予定終了時刻の10時を1時間以上もオーバーする熱心なものとなりました.
2日目は,雲の中の蔵王となり高原らしい風情の朝を迎えました.
佐藤先生による「液晶の光学素子への応用」,石飛昌光氏(住友化学工業)による「液晶と分子シミュレーション」の講演の後,その場で昼のお弁当を食べ,すぐさま午後の2件の講演,青木良夫先生(埼玉大学)による「液晶の分子構造とその性質」と足立幸志先生(東北大学)による「液晶配向膜のラビングにおけるトライボロジー」を行うという過密さでした.
そろそろ疲れもみえる時間帯であったにもかかわらず,聴講する参加者たちは先生方の興味深い講演内容に魅了されていたようでした.夕食までの2時間ほどの間は,講師の先生とのディスカッションや,大露天風呂や鴨ノ谷地沼への散策に 出かけるなど,各自それぞれ自由な時間を過ごしました.
2夜目のポスターセッションでは,開始時間からの30分ほどを利用し,“液晶カルトクイズ大会”なる催し物を行いました.液晶研究の歴史から,液晶の化学,物理に関するものまで,バラエティーに富んだ問題が鳥海弥和先生(東京大学)から読み上げられ,生き残りを賭けての2者択一のゲームに歓声が上がりました.1位と2位には山形の地酒を,3位には本スクールの1週間前に開催されていた液晶国際会議のストラスブール土産を賞品とし,大いに盛り上がりました.この夜のポスターセッションにおいても,多くの方々が予定終了時刻を過ぎても会場に残っておりました.
3日目には天気も回復し,蔵王の中腹付近まで見ることができました.戸谷和男氏(メルクジャパン)による「液晶組成物の物性制御」と関秀廣先生(八戸工業大学)による「ペーパーホワイトを実現する反射型液晶ディスプレイ」の講演が行われ,引き続いて関先生に閉校の挨拶を頂き,3日間のスクールが終了いたしました.
このサマースクールでは,参加者の世代や所属および研究分野などを越えた交流の場を提供することも目的のひとつとしておりましたが,2日目の夜には実行委員の部屋に学生一般を問わず自然に集い,狭い部屋は座るスペースもなくなるほどとなって,深夜までにぎやかな会話が続きました.このような集まりは,各部屋でも行われていたようで,ポスターセッションの盛況さとともに,この目的も大いに達成できたのではないかと思われます.
今回のサマースクールは,ストラスブールでの液晶国際会議の直後ということもあり,常日頃からお忙しい講師の先生方には大変過密なスケジュールとなってしまいました.また,実行委員においても帰国後3日間ほどしか準備期間がなかったため,参加された方々に十分な配慮ができたかどうか,また不備な点が多くなかったかなど,不安もありました.
しかし,講師の先生方のご熱心な講演と,積極的にスクールに取り組んで下さる参加者に支えられ,無事3日間のスクールを終了することができました.この場をお借りして,皆様に御礼を申し上げたいと思います.
来年も更なる盛況なサマースクールとなることを期待して,本報告と致します.
文責:山口留美子(Rumiko YAMAGUCHI)
秋田大学工学資源学部電気電子工学科