ソフトマターって何?


ソフトマター(Soft matter)とは高分子・液晶分子・界面活性剤分子・ゲル・生体膜・コロイド粒子などの柔らかい物質が作る様々な複合系を意味します。英語では,固体のような硬い凝縮物質をHard Condensed Matterと呼ぶのに対して,柔らかい凝縮物質をSoft Condensed Matter と呼びます。ソフトマターと言う言葉は1990年頃から使われた比較的新しい言葉です。では,ソフトマターの特徴とは何でしょうか?例えば,鉄とゴムを比べましょう。鉄は堅い,ゴムは柔らかい!。見た目は両者ともほとんど固体の様に見えます。触ってみて初めて伸ばすことが出来るものをゴムと判断します。ゴムには鉄にはないエントロピー弾性が存在します。大きな変形に対してゴムを構成する高分子の持つエントロピーが弾性力を生み出します。最近の高層建築物の耐震材にはゴムが使われています。普通の低分子、例えばメタノール、水などは分子の大きさが数オングストロームであるのに対して,ソフトマターは数百から数千オングストロームの大きさの分子や分子集団によって構成されています。簡単に言ってしまえば,分子の大きさや形が違うだけで様々な相互作用を生み出し,物質の構造や安定性,特性が決まります。ソフトマターはエントロピーの科学といっても過言では無いでしょう。さらに,新素材の開発や生命現象へのアプローチという観点からもソフトマターの探求はますます必要で、かつ盛んな分野となっています。

ソフトマターが作る様々な物性は液晶秩序が作る階層構造と密接に関係しています。例えば,多くの生体機能は,両親媒性分子が作るラメラ相(スメクチック相)を基本構造とした生体膜を介した高分子やコロイド粒子などの物質の輸送によって発現しています。化粧品などは界面活性剤分子と様々なソフトマターの複合系でつくられ,まさにリオトロピック液晶の物理・化学的研究が重要です。液晶分子と高分子の混合系や,液晶分子とコロイド粒子の混合系などは液晶ディスプレーの材料として重要です。このようなソフトマターが作る液晶構造の分散安定性に関する研究は,液晶ディスプレーに続く第二の液晶産業に発展する可能性を秘め,今後,液晶ディスプレーのみならず、新規材料・食品・油化製品・化粧品・医療品・生体材料などの、様々な分野において重要になると思います。(2005年4月)