日本液晶学会・ソフトマターフォーラムの概要


“ソフトマター”とは、物理・化学・生物をクロスオーバーした、特定の1つの科学分野を指し示す言葉として一般的に認知されつつあります。ここで、“ソフトマター”に属する物質群には、サーモトロピック液晶をはじめとして、リオトロピック、高分子、エマルジョン、コロイド、ゲルといった、液晶学会にもなじみの深い物質が含まれています。逆に言えば“液晶”とは、これらの物質群に共通する、ある種の“状態”を指し示す言葉であって、特定の物質を指し示すものではありません。このカテゴリーが目標とするソフトな複合凝縮系は、“液晶秩序”を基礎として、生体構造を究極的な模範とするような、様々な複雑・巨大な階層構造を自発的に構築することを特徴としています。そこで本フォーラムでは、このような事実を踏まえ、複合凝縮系における、階層構造構築の基礎的なメカニズムと、様々なスケールの中間構造・揺らぎに起因して競合・結合の結果として生じる物性を、分子から巨視的なスケールまで広帯域に、“液晶”をキーワードとして理解することを目標として活動する予定です。このようなソフトマターの液晶研究は、液晶ディスプレーに限らず、広い意味の有機材料、あるいは食品、油化製品、化粧品、医療品といった、様々な分野における多種多様な高機能材料に大きな発展をもたらすものと期待しています。また究極的には、生体構造の理解に既存のアプローチとは違う方法で近づける学問領域に発展する可能性を持っています。
 ソフトマターフォーラムでは、今回のフォーラム名称の改名に伴い、基調となるいくつかの講演会を今年度催す予定です。液晶学会の皆様には、お忙しいこととは思いますが、フォーラム講演会への、多数の参加をお待ちしております。また、本フォーラムカテゴリーは、液晶科学とソフトマターの接点を広げるべく、まさにこれから新しい科学分野として発展しようとしている分野ですので、秋の液晶学会講演会では、当カテゴリーにおいて活発な講演申し込みや当日の議論を期待している次第です。
 講演会、液晶学会討論会などにおける活動予定は、JLCSメーリングリスト、ソフトマターフォーラムのHPによりご案内する予定です。どうぞ宜しくお願い致します。
2005年4月