巻頭言

  • 「液晶」を振り返って / 高津晴義 -191(1)-

総説

  • 液晶表示モードの進化 / 山田祐一郎 -192(2)-

解説

  • あらゆる温度環境に対応した新規超高速応答VA液晶ディスプレイ / 岩田洋典, 村田充弘, 田中耕平, 大竹 忠, 吉田秀史, 宮地弘一 -210(20)-
  • 二軸性ネマチック液晶相の対称性と相転移 / 苗村省平 -216(26)-
  • 電場による液晶の流動とその応用 / 築地徹浩 -227(37)-

講座

  • 物質中の光の振る舞いはどのように決まるのか(4) —光学異方性媒質中の光の進み方— / 田所利康 -234(44)-

George W. Gray 博士を偲ぶ / 苗村省平 -245(55)-

英文アブストラクト -246(56)-

総目次 -248(58)-

第1巻〜第16巻までの主要目次 -249(59)-

編集後記 -254(64)-

日本液晶学会賛助企業 -表3-

総説・解説要旨

液晶表示モードの進化
山田祐一郎

DSM液晶モードの発明から現在に至るまで数多くの表示モードが提案されているが,性能,作りやすさ,コストを勘案し,モバイル,中小型,大型ディスプレイのそれぞれの分野の要求に合致したものだけが生き残り,その他は淘汰されている.現在主流となっている表示モードTN,VA,IPSはいわゆる“筋のよい”表示モードであり,いろいろな技術開発が加わり,当初から見ると性能面,駆動面,信頼性面で大きく進歩している.本稿では筆者がかかわったこれら“筋のよい”表示モードと,これらの表示モードからは置いて行かれた感のあるFLC,AFLC についてその技術開発の経過をレビューする.

キーワード: 液晶表示モード,TN,VA,MVA,CPA,PVA,PSA,UV2A,FPA,FLC,AFLC,TL-AFLC

あらゆる温度環境に対応した新規超高速応答VA液晶ディスプレイ
岩田洋典,村田充弘,田中耕平,大竹 忠,吉田秀史,宮地弘一

われわれは,極低温から高温までの広範囲な使用温度環境において,動画視認性に優れた液晶表示モードであるSuper-Fast Response(SFR)モードを開発した.誘電率異方性が正のネマチック液晶材料を用い,初期配向は垂直配向である.電極構造,駆動法を工夫して液晶に縦電界と横電界を同時に印加できるようにすることで,立ち上がり,立ち下がりどちらのスイッチングも液晶を電界で応答させることに成功した.これによりSFR モードは,Multi-domain Vertical Alignment やIn-Plane Switching など,従来の液晶表示モードと比較して数倍速い応答時間を達成し,液晶の粘度が著しく高くなる極低温においても,動画ぼけのない高い動画視認性を実現した.

キーワード: 高速応答,広範囲な温度域,動画視認性,VA液晶ディスプレイ

二軸性ネマチック液晶相の対称性と相転移
苗村省平

ネマチック液晶凝縮系において,構成分子の配向秩序が空間的に一様な部分系の二軸対称性を議論する.一般化した球面調和関数(Wigner 関数)系で表される秩序変数を用いて配向秩序構造を記述し,その対称性を同型の点群によって分類する.そうすると,二軸対称性をもつネマチック副次相の相系列を,不変部分群をつなぐ相関図で表すことができる.最後に,ネマチック液晶の多形の熱力学的安定性を解析する平均場理論の一例を紹介する.

キーワード: 二軸性ネマチック液晶,配向秩序変数,対称性,点群,相転移,平均場理論

電場による液晶の流動とその応用
築地徹浩

本解析記事では,当研究室で開発された液晶を流動させ運ぶ小さな2種類のポンプに関して説明する.このポンプをここでは液晶ポンプと呼ぶ.まず,一つ目のポンプについてであるが,平板形状で流路底面に電極を有するポンプを製作し,回転電場の一つである三相交流電流を印加し流動を誘起した.電場の印加のもとで,ポンプの流量と圧力の特性を計測した.そして本ポンプの特性を簡単化するために次元解析を行った結果,無次元圧力と無次元流量の関係はほぼ一本の直線となった.さらに,ポンプ内部の流動の可視化実験と流動解析を行い,回転流動の発現を確認した.次に,直流電場を用いて誘起される液晶の一方向の流動を用いたポンプを製作した.このポンプは円筒形状の流路と円筒形状の電極を有している.直流電圧を用いて可視化実験を行い,液晶が一方向の流動を引き起こすことを確認し,本円筒型ポンプの有次元および無次元の圧力流量特性計測実験を行った.高圧力や高流量を得るために種々の形状の電極や流路が製作され,それらの結果が比較された.このポンプを接続することにより,高圧力や高流量が得られた.今回の2種類の液晶ポンプの構造は単純で,さらなる研究で小型化が可能である.本ポンプは,電気エネルギーを流体エネルギーに変換するアクチュエーターに対する液体供給源として使用できる.さらに,本ポンプは振動や騒音がないため,クーリングシステムでのポンプとして用いられる可能性がある.

キーワード: 液晶,機能性流体,フルードパワー,ポンプ,流体力学