解説要旨

高分子安定化技術:強誘電性液晶を中心に
古江広和

強誘電性液晶は高速応答,広視野角,双安定メモリー性などの特徴を有し,次世代の液晶ディスプレイ材料として期待されてきた.しかし,双安定性は中間調表示を困難とさせる.単安定化のための技術に高分子安定化がある.高分子安定化とは,液晶媒質中に光重合性モノマーを添加し,紫外線照射によって重合を行うことにより,生成した強固な高分子によって軟弱な液晶分子配向構造を安定化させる技術である.重合時の配向構造が安定化されるため,温度・相や電場印加などで安定化構造をコントロールすることにより,多彩に液晶媒質の特性改善や新奇特性の発現が可能となる.本稿では,強誘電性液晶の単安定化を中心に,筆者らがこれまで進めて来た高分子安定化に関する研究結果を紹介する.

キーワード:高分子安定化,強誘電性液晶,単安定化,配向構造

光フリース転位を利用した分子配向性の光配向
川月喜弘,近藤瑞穂

偏光軸選択的な光フリース転位反応を基軸とした分子配向性の光配向材料について解説する.近年,さまざまな利点から光配向技術が注目されているが,著者らは異方的な表面を作製するという観点だけでなく,内部の分子自体を光配向させる材料を開発してきた.本解説では,フリース転位しうる側鎖を持つ簡単な高分子液晶が異方的に光反応するとともに,光分子配向が誘起できることを説明し,次に置換基や構造を変化させることで照射光の偏光軸に対してさまざまな方向に分子配向できることを示す.

キーワード:光配向,複屈折フィルム,光フリース転位

液晶の光配向とベクトル型回折格子
小野浩司,佐々木友之,野田浩平,江本顕雄,川月喜弘

回折光学素子は,将来の幅広い光エレクトロニクスシステムにおける多彩な光学機能を実現するために大変重要である.近年,光反応性液晶を用いた光配向技術と,ベクトル型回折格子と呼ばれる異方性回折格子の光学設計技術,が進展し,液晶技術を用いた回折格子素子への興味が新たになってきている.本稿では,ベクトル型回折格子の光学特性の理論を解説し,我々が検討を進めている光架橋性高分子液晶を用いたホログラフィックベクトル回折格子を紹介する.

キーワード:光配向,偏光ホログラム,偏光,回折格子,光架橋性高分子液晶

光により液体固体相転移を繰り返す液晶性材料
秋山陽久

室温において温度変化させずに,紫外光照射で液化,可視光照射で固化を繰り返し行うことができる液晶材料を開発した.この材料は,すべての水酸基が複数のメソゲン性アゾベンゼンで置換された糖アルコール誘導体の構造を持ち,その置換基の個数によって液晶相の安定性と光相転移挙動が変化した.基本的には置換基数の増加により液晶相が安定化していき,置換基数が4を超えると光相転移を示すようになった.加えて,この材料をガラス基板に対する接着層として用いた場合,光の照射によって接着力が変化して基材であるガラス板の脱着や接着を繰り返し行うことができた.

キーワード:光相転移,アゾベンゼン,光異性化,可逆的接着,液晶ガラス