挨拶文(校長 木村 宗弘)

 2012年液晶学会サマースクールは、今年は埼玉にて無事に開催することができました。昨年の震災以来、都心近郊での開催を行うこととなりましたが、講師の先生方そして参加者の皆様方のご協力もあり、大成功に終わったと思います。この場をお借りして、サマースクールを盛り上げてくださった講師・実行委員の皆様、参加者の皆様に厚く御礼申し上げたいと思います。

 これからも、基礎的な内容にとどまらず学術分野や産業分野におけるホットな話題も盛り込むように吟味したプログラムで魅力的なサマースクールを企画する予定です。ぜひ、2年、3年と繰り返しのご参加をお待ちしております。今後とも、よろしくお願い致します。


2012年度液晶サマースクール開催報告(実行委員長 安武幹雄)

 2012年液晶サマースクールが、7月19日(木)~21日(土)の日程で、埼玉(むさしのグランドホテル)にて行われた。参加人数は、講師・実行委員も含めて53名であった。期間中、天候も良好で予定通り「液晶の基礎から応用まで」の講義が行えた。木村校長先生・講師・実行委員の皆様、参加者の皆様のおかげで、たいへん有意義なサマースクールとなった。

 今回、サマースクールを開催するにあたって、講師陣で早い時期から念入りにディスカッションし、テーマには「液晶研究におけるミクロな視点・マクロな視点」を選んだ。また、講師の方々にはそのテーマに沿った講義をしていただいた。スケジュールとしては、初日、二日目とも朝早くから夕方にかけてハードな日程であった。また、毎晩行われた懇親会も多くの人が参加され、夜遅くまで交流を楽しんでいただいた。

 講義としては、以下の9つの講義が行われ、液晶研究における物理・化学・デバイスおよび液晶産業について、それぞれの専門家が丁寧で分かりやすい説明を行った。簡単ではあるが以下に各々の講義の内容を紹介する。

講義1「分子構造と液晶性」安武 幹雄(埼玉大)
 今回のサマースクールの大まかな流れを話した後、液晶研究の歴史、液晶相の分類、相構造の説明を具体的にした。また、相を形成するためのドライビングホースに関して分子レベルで図示し説明した。
講義2「メーカーから見た熱分析測定の実態、および装置の校正」塚本 修 先生(ブルカーAXS)
 熱分析の基本的な原理や言葉などが詳細に説明され、正しいデータの示し方や装置校正の正しい行い方など丁寧に説明がなされた。また、不純物混入時における相転移の変化に関して詳しい説明がなされた。
講義3「偏光顕微鏡と液晶の組織観察」石川 謙 先生(東工大)
 偏光顕微鏡の仕組みや使い方、セロテープで自作された模型や多くのきれいな顕微鏡写真を例に、分子集合状態と組織の関係、液晶相の分類方法などを詳細な説明がなされた。
講義4「ネマチック相の物理入門」尾﨑 良太郎先生(愛媛大)
 ネマチック相の物理について、簡単な式でわかりやすい図、シミュレーションなどを駆使して、Landau-de Gennes理論、連続体理論などをわかりやすい講義がなされた。
講義5「ミクロな複雑性からマクロな複雑系へ」西山 伊佐 先生(DIC)
 複雑な相に関して、なぜ複雑になるのかのその要因を分子chiralityやsegregationのキーワードを基に詳細に解説された。さらに、各々の複雑相が示す機能に関しても講義がなされた。
講義6「ミクロとマクロから見た液晶相における電気伝導」舟橋 正浩 先生(香川大)
 電気伝導の考え方についての詳しい説明と測定方法について図を使って詳しく説明がなされた。さらに、液晶材料を使った電子デバイス材料の可能性についても講義がなされた。
講義7「界面配向」木村 宗弘 先生(長岡技科大)
 界面配向膜やアンカリングの効果についての基礎知識をたくさんのわかりやすい図を使って説明がなされた。併せて、ラビング配向がなんたるかも詳しい説明がなされた。
講義8「ディスプレイモード」小村 真一 先生(ジャパンディスプレイイースト)
 液晶ディスプレイの各方式の原理(TN、TFT、VA、OCB、IPS、ZBD、BiNEM、SSFLCなど)や昨年のSIDで発表された最新の液晶表示モード開発の最近の動向について詳しい講義がなされた。
講義9「高分子液晶材料」真崎 仁詩 先生(JX日鉱日石)
 高分子液晶の用途である光学補償フィルムの原理を詳細に説明がなされた。さらに、JX日鉱日石で開発された光学補償フィルムの分子構造やその各生産工程についても講義がなされた。

 最終日の招待講演では、埼玉大学名誉教授の野平 博之先生に『キラル化学と強誘電性液晶の研究を振り返って』を題目に講演をしていただいた。内容としては、これまで先生が液晶に携わった経緯から強誘電性の液晶ディスプレイ開発に至るまでのお話と、今なお別の分野で精力的に頑張ってこられているご講演であり、多くの参加者は興味深く聞き入っているようであった。

 例年開かれている2日目夜のポスターセッションでは、10件の発表があり、いずれも高いレベルの内容で、20時~24時まで議論が続いた。参加者にとって研究者と直に質疑応答ができる良い機会であったと思う。また、委員の先生方には、お忙しいところ、夜中まで優秀賞の審査をしていただいた。

 今回のサマースクールは、木村校長先生をはじめ皆様のご協力のおかげで無事終了させることができた。また、ほとんどボランティアであるにもかかわらず、いろいろと私の無理なお願いに快く対応してくださった木村校長先生および講師の皆様に重ねて御礼申し上げます。

 最後に、2012液晶サマースクールを企画・運営したワーキンググループのお名前を以下に記します。石川 謙 先生(東工大)、尾﨑 良太郎 先生(愛媛大)、木村 宗弘 校長先生(長岡技大)、小村 真一 先生(ジャパンディスプレイイースト)、塚本 修 先生(ブルカーAXS)、西山 伊佐 先生(DIC)、野平 博之 先生(埼玉大・名誉教授)、舟橋 正浩 先生(香川大)、真崎 仁詩 先生(JX日鉱日石)、氏家 誠司 先生(大分大)、そして安武 幹雄 (埼玉大)です。

                             液晶サマースクール実行委員長
                             埼玉大・科学分析支援センター 安武幹雄