巻頭言

  • 一般社団法人日本液晶学会の現状と課題 / 中村尚武 -233(1)-

総説

  • 柔粘性結晶の電気化学デバイス用固体電解質への応用 / 松本一 -234(2)-

解説

  • 有機溶媒中での脂質ナノチューブの分散と自発的ネマチック配向 / 南川博之, 増田光俊 -243(11)-
  • コレステリック液晶レーザーの数値シミュレーション ―レージング・ダイナミクスのADE-FDTD 解析― / 松井龍之介 -248(16)-
  • 液晶材料のらせん構造を活用した新しいTN液晶の開発 / 高頭孝毅, 穐本光弘 -256(24)-
  • サーモトロピック液晶性部位を有する人工リン脂質:リオトロピック液晶性とその外場応答性評価 / 蟹江澄志, 関口準二, Xiangbing Zeng, Goran Ungar, 村松淳司 -272(40)-
  • 電荷によって形成される溶液中の秩序構造 / 瀬戸秀紀, 貞包浩一朗 -279(47)-

講座

  • 物質中の光の振る舞いはどのように決まるのか(2) ―「媒質中で光は遅くなる」とは限らない― / 田所利康 -285(53)-

研究室紹介

  • 防衛大学校電気情報学群電気電子工学科電子デバイス工学研究室 / 森武洋 -293(61)-

学会・会議報告

  • 勉強会「ブルー相を語り合う」 / 齋藤一弥 -294(62)-
  • 2012年度液晶サマースクール開催報告 / 安武幹雄 -295(63)-

英文アブストラクト -297(65)-

総目次 -299(67)-

編集後記 -301(69)-

日本液晶学会賛助企業 -304(72)-

総説・解説要旨

柔粘性結晶の電気化学デバイス用固体電解質への応用
松本一

 液晶と同じメソフェーズの一種である柔粘性結晶は近年新規な固体電解質として,リチウム二次電池や燃料電池,色素増感太陽電池などの電気化学デバイス用の新しい固体電解質として注目され始めている.比較的古くから電解質物性の検討はなされていたが,特に最近になって熱安定性に優れ,難揮発性のイオン液体と同様の構成からなる塩で,柔粘性結晶相を示すものに注目が集まっている.本稿では,これらを中心に,電気化学デバイス用の新規な固体柔粘性結晶相に関する研究について紹介する.

キーワード: 柔粘性結晶,プラスチッククリスタル,電気化学デバイス,固体電解質,イオン液体

有機溶媒中での脂質ナノチューブの分散と自発的ネマチック配向
南川博之,増田光俊

われわれはこれまで,糖脂質を水中で分子集合させることにより内径約60 nm の脂質ナノチューブが得られることを報告している.この脂質を熱メタノール中から析出させた場合にも,脂質はナノチューブの形態に分子集合するが,その外表面は相対的に疎水的な性質を持っていると考えられる.もし,この脂質ナノチューブを有機溶媒中に良好に分散させる条件を見つけることができれば,各種の有機化合物と脂質ナノチューブとの複合化も可能になると考えられる.加えて,脂質ナノチューブが高い軸比を持つナノ構造体であることから,棒状コロイド粒子に特徴的な自発的な配向も期待できる.われわれは,密度と屈折率を指標として有機溶媒を探索し,この脂質ナノチューブをすくなくとも3箇月以上良好に分散させる条件を見出した.併せて,脂質ナノチューブの濃度を調整することにより,有機溶媒中での脂質ナノチューブの自発配向を実現した.

キーワード: 脂質ナノチューブ,屈折率マッチング,分散性,ネマチック配向,接触角

コレステリック液晶レーザーの数値シミュレーション
―レージング・ダイナミクスのADE-FDTD 解析―
松井龍之介

コレステリック液晶の自己組織化的ならせん周期構造をフォトニック結晶として応用したレーザー素子に関する研究が,国内外において活発になされている.このような微小共振器レーザーの解析には,時間領域差分法(FDTD 法)と,分極の運動方程式や四準位系でのレート方程式などの補助方程式(ADE)とを組み合わせたADE-FDTD 法と呼ばれる数値電磁界解析法が有効である.本稿においては,まずはランダムレーザーをはじめとしさまざまな微小共振器レーザーのADE-FDTD 解析に関する最近の研究動向を紹介する.次に,ADE-FDTD 法によるレージング・ダイナミクスの数値シミュレーション法の概要を解説し,本手法をコレステリック液晶レーザーの解析へと適用した筆者らの研究について紹介する.

キーワード: コレステリック液晶,レーザー,フォトニック結晶,ランダムレーザー,数値電磁界解析,時間領域差分法,FDTD 法,ADE-FDTD 法,ローレンツ振動子モデル,レート方程式

液晶材料のらせん構造を活用した新しいTN 液晶の開発
高頭孝毅,穐本光弘

TN 液晶は現在でも広い範囲の活用が期待されているが,その駆動電圧や応答速度などの特性の改善は液晶材料の改良に頼っているのが実情である.著者たちはそのような現状に対して,液晶材料のらせん構造(カイラリティー)を積極的に活用し,低電圧駆動や高速応答を実現する手法を提案してきた.本稿では,これらの手法を原理から解説し,これまで得られた成果を紹介する.また,関連した技術として双安定液晶を解説する.

キーワード: TN 液晶,カイラリティー,スプレイツイスト,低電圧駆動,高速応答,双安定性,トポロジカルに同等

サーモトロピック液晶性部位を有する人工リン脂質:
リオトロピック液晶性とその外場応答性評価
蟹江澄志,関口準二,Xiangbing Zeng,Goran Ungar,村松淳司

脂質二分子膜は,膜タンパクの保持・イオン輸送・光合成など,機能材料設計の立場からみて実に魅力的な機能を有する.こうした機能は,脂質二分子膜中に存在する少量の機能性分子に由来しており,二分子膜の主成分であるリン脂質は単に機能性分子固定用の土台としての役割を担っている.そこで本研究では,外場によりアクティブな組織構造変化・ダイナミックな応答性を示す人工リン脂質を創製し,リン脂質自身に機能性を付与することを目的とした.具体的には,サーモトロピック液晶性分子にホスファチジルコリン部位を導入することで人工リン脂質を合成し,その液晶相構造解析,電場・光応答性評価を行った.本稿では,その詳細について紹介する.

キーワード: リン脂質,電場応答性,リオトロピック

電荷によって形成される溶液中の秩序構造
瀬戸秀紀,貞包浩一朗

親水性の陽イオンと疎水性の陰イオンからなる「拮抗的な塩」は,水と有機溶媒の混合溶液に加えたときに,NaClなどの他の塩を加えたときとは違った振る舞いをする.これは,陽イオンが水分子を,陰イオンが3MP 分子を引きつける「選択的溶媒和」が起きることが主な原因だが,これによりCharge Density Wave構造やラメラ構造,スポンジ構造などのさまざまなナノ構造が形成されることがわかってきた.ここでは,われわれが中性子小角散乱や顕微鏡観察により明らかにしてきたさまざまなナノ構造について紹介する.

キーワード: 選択的溶媒和,拮抗的な塩,中性子小角散乱,ナノ構造