Pages: 1 2
総説・解説要旨
- 液晶合成の刷新につながる交差カップリング反応
- 清水 正毅
1972年にわが国で生まれた交差カップリング反応は,その誕生から今日に至るまで活発に研究が展開されている.遷移金属触媒を利用することにより,有機典型金属化合物と有機ハロゲン化物だけでは不可能なsp2炭素-sp2炭素結合の構築を自在にできるようになり,その恩恵はさまざまな医薬品合成や材料合成に及ぶ.液晶合成法も交差カップリング反応の出現により大きく様変わりした.最近の交差カップリングに関する研究は,配位子をデザインしてより高活性な触媒系を開発することが主流となり,これまで難しいとされてきた不活性な官能基を脱離基とするカップリング反応やハロゲン化アルキルを求電子剤とするカップリング反応が可能になってきている.
本稿では,液晶合成の刷新に直結する観点から,近年研究が盛んなハロゲン以外の官能基を脱離基とするビアリールカップリングならびにハロゲン化アルキルとアレーン金属およびアルキル金属とハロゲン化アリールとのカップリング反応に焦点を絞って,その2000年以降の進歩を紹介する.
キーワード: 交差カップリング,ビアリール,アルキルアレーン
- 創薬化学における液晶
- 福士 由佳子, 吉澤 篤
細胞膜など生体組織において液晶が重要な役割を果たしていることが知られている.画像診断用の3D液晶モニターのみならず,医薬分野において液晶性を持つことの優位性を生かした薬剤が研究されている.本総説では,生体組織観察用チューナブルフィルター,生体関連分子の相互作用の可視化,細胞内浸透性を利用したドラッグデリバリーシステム,最後に,液晶性と薬理活性作用との相関に基づく抗腫瘍薬の探索について解説し,医薬分野における液晶展開のフロンティアを紹介する.
キーワード: 液晶,創薬化学,ドラッグデリバリーシステム,抗腫瘍効果
- スメクチックバブルの外場による変形挙動
- 多辺 由佳, 杉澤 進也, 石井 陽子
スメクチック液晶でつくったバブルは,丈夫さと柔軟性を併せ持ち,外場下で大きな変形を示す.われわれは,半球状のスメクチックバブルに,気体の濃度勾配とDC電場という二つの外場をそれぞれ与え,バブルの変形挙動から気体透過係数・表面張力・導電率などの物性値を導出した.さらに,閾値以上のDC電場下ではスメクチックバブルが伸縮を繰り返して発振することを観測し,インクジェットとの関連および応用の可能性について検討した.
キーワード: スメクチック膜,バブル,気体透過,表面張力,電場変形
- 共役系オリゴマー液晶:分子構造と相転移挙動との相関
- 谷田部 哲夫
共役系オリゴマー液晶とは,共役系オリゴマー骨格をメソゲンコアとする液晶である.このような液晶において,オリゴマーコアの形・長さ,側鎖の長さ・数・位置および末端鎖の長さ・数は,液晶形成および相転移温度における重要な構造因子となるはずであるが,構造物性相関はこれまで十分に解明されていなかった.本稿では,分子構造と相転移挙動との相関の解明を目的としている,オリゴ(p-フェニレンエチニレン)のアルキル置換体における構造物性相関を解説する.はじめに,オリゴマー3~6量体においてコアの長さと相転移挙動との相関について述べる.次に,4量体において側鎖および末端鎖が液晶形成および相転移温度に及ぼす影響について述べる.さらに,6量体において側鎖および末端鎖の影響について述べる.加えて,4量体および6量体において,側鎖および末端鎖が同じである化合物を比較し,コアの長さが相転移挙動に及ぼす影響についても述べる.
キーワード: 共役系オリゴマー液晶,オリゴ(p-フェニレンエチニレン),分子構造,オリゴマーコア,側鎖,末端鎖,液晶性,ネマチック相,相転移温度,構造物性相関
- 生体分子モーターの自発的高次構造形成
- 敷中 一洋, 角五 彰, 龔 剣萍
せん断応力下におけるタンパク質のゲル化や生体系を模倣した異方的自己組織化により得られた巨視的に高次構造を持つ生体分子モーター自己集合体について解説する.はじめに生体分子モーターとその集合体形成の意義について解説し,その後,各種手法を用いた生体分子モーターのインテグレーションについて記載する.具体的には,①生体分子モーターアクチン・ミオシンをせん断応力下で自己組織化させることで得られる自律配向ゲル,②生体分子モーターチューブリンの自己組織化を時空間制御することで得られる配向微小管構造体について提示する.
キーワード: アクチン,ミオシン,微小管,キネシン,自己組織化
Pages: 1 2