EKISHO Vol.14 No.3

巻頭言

  • 270°ツイストセルの分子配列モデル / 廣嶋綱紀-149(1)-

総説

  • 液晶のゆらぎ / 折原宏, 長屋智之 -151(3)-

解説

  • 液晶相を経由するキャストフィルムの形成と電場配向 / 田中克史, 秋山隆一 -169(21)-
  • 液晶滴下工法(ODF)用UVシール剤 / 山口真史 -175(27)-
  • 液晶が配向特性に及ぼす影響—ラビング処理ポリビニルシンナメート膜における液晶材料依存性— / 山口留美子 -186(38)-
  • 液晶のネマチックおよびスメクチックA相におけるずり誘起構造変化 / 祢宜田啓史 -193(45)-

講座

  • 光源,ディスプレイの光計測の基礎と応用 / 大久保和明 -203(55)-

研究室紹介

  • 高知工科大学システム工学群流体力学研究室 / 蝶野成臣, 辻知宏 -207(59)-

書評

  • 光学入門—光の性質を知ろう—(大津元一, 田所利康著) / 内藤裕義 -209(61)-

英文アブストラクト -210(62)-

学会記事

  • 1.2010年日本液晶学会討論会のお知らせ -212(64)-
    2.2010年日本液晶学会講演会のお知らせ
    3.2010年日本液晶学会講演会・討論会参加費および事前登録

編集後記 -214(66)-

日本液晶学会賛助企業-216(68)-

総説・解説要旨

液晶のゆらぎ
折原宏, 長屋智之

 平衡および非平衡系におけるネマチック液晶のゆらぎについて解説する.はじめに平衡系におけるゆらぎの一般論を述べた後,配向ゆらぎに起因する光散乱について説明する.フランクの弾性論を基に平均の光散乱強度(静的光散乱)を,エリクセン—レスリー理論から強度の時間相関関数(動的光散乱)を導出する.高速ビデオカメラを用いた偏光顕微鏡によるゆらぎの直接観察およびゆらぎと粘弾性測定との関係についても言及する.非平衡系については,垂直配向セルで発生する液晶電気対流を例にとり,非平衡状態における液晶構造のゆらぎを議論する.さらに,光フィードバック下の液晶光バルブにおいて出現する自己組織化パターンをKarhunen-Loéve法により解析した結果を紹介する.

キーワード: ゆらぎ,光散乱,遥動散逸定理,粘性,液晶電気対流,乱流,パターン形成

液晶相を経由するキャストフィルムの形成と電場配向
田中克史, 秋山隆一

 ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)水溶液を中心に,誘電緩和,誘電パラメーターの濃度依存性と液晶相転移挙動について示した.また,これらの知見に基づいて,HPC 等方性水溶液から,液晶相を経由して得られるキャストフィルムの形成過程について,その場における評価例を示した.さらに,キャストフィルム形成過程における電場配向挙動,巨視的に配向した固体フィルムの形成について示した.

キーワード: ヒドロキシプロピルセルロース,水溶液,液晶相,キャストフィルム,電場配向

液晶滴下工法(ODF)用UVシール剤
山口真史

 本稿では液晶滴下工法用のUV シール剤について紹介する.まず最初に真空注入方式との長所・短所を比較し,液晶パネルの周辺設計とUV シール剤の関係,そしてUV シール剤の成分構成,要求性能について述べる.さらに液晶滴下工法におけるUV シール剤に関するトラブル,汚染パネル分析についても簡単に紹介する.

キーワード: 液晶滴下工法,シール剤,額縁,接着,ムラ

液晶が配向特性に及ぼす影響—ラビング処理ポリビニルシンナメート膜における液晶材料依存性—
山口留美子

 液晶の配向現象は,“配向膜と液晶の協力現象”であるが,“配向膜が液晶分子の配向方向を決定する”といった一方向からの視点で行われていることが多い.逆の視点,すなわち液晶側からの影響を積極的に取り入れた配向状態の制御に着目した報告は少ない.本解説では,光配向膜として知られているポリビニルシンナメート(PVCi)にラビング処理をして配向膜としている.液晶のツイスト弾性力を活用し,PVCi膜のアンカリング力を変えることで液晶バルク配列のツイスト角制御を行った.また,液晶の光励起状態を変えることによってPVCi容易軸の変化を制御する試みを紹介する.

キーワード: ネマチック液晶,配向膜,ポリビニルシンナメート,容易軸,アンカリング力

液晶のネマチックおよびスメクチックA相におけるずり誘起構造変化
祢宜田啓史

 代表的な液晶相であるネマチック(N)相およびスメクチックA(SA)相にずり流動を与えた際のずり誘起構造について,我々の研究室で行ってきた粘性および誘電測定の結果を中心に解説する.N相におけるずり誘起構造は,液晶がどのような相転移系列を示すかによって異なる.N 相-アイソトロピック(I)相と相転移する液晶では,そのずり誘起構造は単純で,ずり流動によってdirector がほぼ流れ方向に配向する流動配向が生じる.一方,SA相-N 相-I 相と相転移する液晶のN 相では,SA構造のゆらぎによってずり誘起構造は複雑になり,SA-N 相転移点に近づくと,いくつかの才差運動で特徴づけられる動的構造が誘起される.また,SA相では,ずり流動によって,undulation やSA層の配向変化をともなうflip転移が誘起される.このようなN 相およびSA相におけるバラエティーに富むずり誘起構造変化を紹介していく.

キーワード: ネマチック相,スメクチックA 相,ずり誘起構造変化,流動配向,SA構造のゆらぎ,才差運動,Flip転移