EKISHO Vol.5 No.4

巻頭言

  • LCDへの思い入れ / 川上英昭 -1-

解説

  • 近接場光学顕微鏡を用いた界面液晶配向の電場応答観察 / 田所利 康 -3-
  • 双頭型糖脂質の自己集合と熱相転移挙動:ナノファイバーから液晶まで / 増田光俊, 清水敏美 -12-
  • 結晶構造を通して液晶分子の相互作用を探る / 堀 佳也子 -20-

講座

  • 液晶ディスプレイ入門第10回:LCDの高速応答化(その2) / 久保恭宏 -31-

研究室紹介

  • 東京大学大学院工学系研究科・加藤研究室 / 加藤隆史 -40-

学会・会議報告

  • 高分子学会第50回年次大会報告 / 川月喜弘 -46-
  • 2001 Liquid Crystal Gordon Conference / Darren R. Link -48-
  • 液晶フォトニクス・光デバイスフォーラム講演会報告 / 佐々木建夫 -50-
  • LCMD & IMID2001報告 / 山口留美子 -52-
  • 日本物理学会2001年秋季大会報告 / 松山明彦 -54-
  • FLC2001報告 / 平岡一幸 -56-
  • “Second Anglo-Japanese Seminar on Liquid Crystal”会議報告 / 後藤 泰行 -58-
  • 秋季第62回応用物理学会学術講演会報告 / 森武 洋 -60-

博士論文紹介

  • Harmonic Expression of Surface Anchoring Energy and Analyses of Liquid Crystal Transitions / ZHAO Wei(趙 偉) -61-

英文アブストラクト一覧 -62-

学会記事

  • 1. 日本液晶学会学術活動基金設立のお知らせ -63-
    2. 日本液晶学会寄付金規則
    3. 日本液晶学会学術活動基金運用規則
    4. 2001年度第3回日本液晶学会理事会議事録
    5. 2001年度主催・共催・協賛事業
    6. 研究フォーラム関係
    7. 液晶関連会議予定

編集後記 -72-

解説要旨

近接場光学顕微鏡を用いた界面液晶配向の電場応答観察
田所利康(Toshiyasu TADOKORO)
ジェー・エー・ウーラム・ジャパン(株)エンジニア
東京都杉並区荻窪5-22-9(〒167-0051)
E-mail: tado@fa2.so-net.ne.jp

 液晶の界面配向現象は未だ十分な解析がなされておらず,その発現メカニズムの 究明は液晶科学におけるフロンティアとなっている.筆者らは,ミクロ領域における 界面液晶配向の新しい観察ツールとして液晶の電場応答観察に特化した近接場光学顕 微鏡の開発を行った.本稿では開発されたシステムの概要を解説するとともに,同装 置を用いた液晶配向分布の観察例を紹介する.

キーワード:近接場光学顕微鏡,偏光,液晶,界面配向

双頭型糖脂質の自己集合と熱相転移挙動:ナノファイバーから液晶まで
増田光俊(Mitsutoshi MASUDA)/清水敏美(Toshimi SIMIZU)
産業技術総合研究所界面ナノアーキテクトニクス研究センター
CREST(科学技術振興事業団)
茨城県つくば市東1丁目1番地中央第5(〒1305-8565)
E-mail: m-masuda@aist.go.jp
E-mail: tshmz-shimizu@aist.go.jp

親水部であるグルコースが種々の長さをもつ疎水部オリゴメチレン鎖の両端にアミ ド結合を介して連結した1-グルコサミド系双頭型糖脂質1(n)を合成した.1(n)は水中 で,疎水性相互作用と水素結合を自己集合力として柔軟性のあるキラル繊維状集合体 (ナノファイバー)あるいは無定形状の集合体を与える.示差走査熱量分析,粉末X線 回折,赤外線吸収スペクトル,X線単結晶構造解析から,これらの集合体中での分子 構造や熱相転移挙動はオリゴメチレン鎖長に強く依存して変化し,三つのグループ( 短鎖,中間鎖,長鎖)に分類できることがわかった.中間鎖に属する糖脂質は,オリ ゴメチレン鎖の炭素数および偶奇数に強く依存して,単分子膜層状構造からなるナノ ファイバーを形成する.長鎖および中間鎖グループに属する一部の双頭型糖脂質は, 環状糖をもつ双頭型糖脂質としては初めてのサーモトロピック液晶相(スメクチックA 相)を与えた.分子動力学シミュレーションやエネルギー解析から,これらの複雑な 熱相転移挙動は,オリゴメチレン鎖の両端で糖水酸基およびアミド基が多重の水素結 合ネットワークを形成し,メチレン鎖の構造を抑制したときに初めて起きることが推 測できた.

キーワード:双頭型糖脂質,スメクチックA相,水素結合,オリゴメチレン鎖,ナ ノファイバー,結晶多形

結晶構造を通して液晶分子の相互作用を探る
堀 佳也子(Kayako HORI)
お茶の水女子大学大学院人間文化研究科・助教授
東京都文京区大塚2-1-1(〒112-8610)
E-mail: khori@cc.ocha.ac.jp

 液晶性物質の系統的な結晶構造解析により明らかにした相互作用の数例を述べる .第一に,ビフェニルエステル類は,末端鎖の化学構造によりエステル結合に関する 五つのパッキングモードに分類できるが,このことはエステル結合の相互作用の重要 性を示している.第二に,アルコキシおよびアルキルシアノビフェニルの系統的な比 較より,両系列の分子内,分子間相互作用の違いを明確にした.第三に,キラル部位 を二つもつ物質の等方性液晶相を発現するキラル認識の起源を,この物質および等方 性液晶相を発現しない異性体の結晶構造に基づき議論する.最後に,コンホメーショ ン変化と結晶多形が,分子間相互作用を研究するために重要であることを指摘する.

キーワード:結晶構造,分子間相互作用,ビフェニルエステル類,シアノビフェル ,キラル認識起源,結晶多形

液晶ディスプレイ入門 第10回:LCDの高速応答化(その2)
久保恭宏(Yasuhiro KUBO)
チッソ石油化学(株)機能材料研究所
千葉県市原市五井海岸5-1(〒290-8551)
E-mail: y.kubo@chisso.co.jp

 LCDの高速応答化について,各駆動モードのモデルを構築して理論的に応答時間に 関連するパラメーターを洗い出すとともに,液晶材料の諸物性についてまとめた.今 回注目した液晶材料の物性値は誘電率異方性(Δε),粘度(η,ν,γ1),屈折率異 方性(Δn)であり,液晶材料の構成成分や構成比率によってそれぞれ連動して変化す るので,バランスが重要である.さらに,おのおのの物性値が応答時間の短縮にどの ように寄与するか,またその際に起こり得る問題点についても触れた.

キーワード:高速応答,トルク・バランス方程式,フロー効果,誘電率異方性,双 極子モーメント,粘度,屈折率異方性